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「進化し続けるコマース基盤(Shopify)の上で作る、クラフトブランドの体験」土屋鞄製造所がユニファイドコマースで目指す本質への回帰

1965年の創業以来、上質なレザーグッズと確かなクラフトマンシップで愛され続ける株式会社土屋鞄製造所。同社は現在、全国の実店舗とオンラインストアをシームレスに融合させる「ユニファイドコマース」を戦略の軸に据え、お客様一人ひとりに寄り添うブランド体験の創出を推し進めています。

その戦略の中核を担うのが、2018年に導入したShopifyのPlusプランです。現在ではグループ全体で計9のストアを運営。事業部横断のナレッジ共有をはじめ、越境ECによるグローバル展開、さらには先進的なAI活用に至るまで、Shopifyの拡張性と機動性を武器にしたEC運営体制を構築しています。

【ShopifyのPlusプラン導入による成果】

  • LTV最大化:店舗とECの併用層が、トップの平均LTV・注文回数
  • カート→購入の通過率 +1pt:ゲストチェックアウトとShop Pay導入
  • 1週間→即時:Sidekickでデータ分析のリードタイムが短縮し、意思決定を高速化

今回は、全社のデジタル戦略を統括する取締役副社長の沼田雄二朗氏、ランドセル事業推進本部 副本部長の小川裕一朗氏、グロースマーケティング部 部長の中橋竜矢氏の3名にインタビューを実施。伝統と革新を掛け合わせる同社が、Shopifyを土台にいかなる事業成長を遂げたのか、その変革の軌跡に迫りました。

株式会社土屋鞄製造所 取締役副社長 沼田雄二朗氏(右)、ランドセル事業推進本部 副本部長 小川裕一朗氏(中央)、グロースマーケティング部 部長 中橋竜矢氏(左)

実店舗とECの境界をなくし、一貫したブランド体験を生む

土屋鞄製造所は、ランドセルや大人向けのレザーグッズなど、幅広い製品を展開しています。同社が複数の事業を横断して重視しているのが、実店舗とオンラインをまたいだ一貫したブランド体験の提供です。

「弊社では、レザーグッズやランドセルのように、お客様がオンラインで調べてから店舗で見て購入されるケースが非常に多い製品を販売しております。だからこそ、オンラインとオフラインをそれぞれ別チャネルとして意識するよりも、統合された一つの体験としてお客様に届けたいと考えています」と沼田氏は語ります。

この考え方は組織設計にも反映されています。同社では、ランドセル、レザーグッズなどの縦軸の事業部ごとにECの運用チームが存在し、広告運用やサイト改善といった専門性の高い施策を担うグロースマーケティングチームが横軸で機能しています。

「Shopifyを導入したことで、EC運用のハードルは大きく下がりました。それならば、EC専門チームに任せきりにするのではなく、各ブランドが自分たちで運用を完結できるべきだと、現時点では考えています。サイト構築から運用・販売・改善までのプロセスがShopifyによって劇的に短縮されたからこそ、各事業部が主体性を持ってECを運営する現在の体制に行き着きました」と沼田氏は振り返ります。

株式会社土屋鞄製造所 取締役副社長 沼田雄二朗氏

拡張性・機動性の欠如とシステムの限界、なぜShopifyへの移行を決断したのか

土屋鞄製造所がShopifyのPlusプランを導入したのは2019年のことです。当時の日本市場においてShopifyのPlusプランの導入は先進的な取り組みであり、その背景には明確な事業課題とShopifyに対する確信がありました。

「実は2010年の時点で、その思想とプロダクトに共感し、すでにShopifyを導入したいと考えていました。ただ、当時はまだ北米でも新しいサービスであり、日本向けのローカライズもなかったため一度断念しましたが、その後も個人的にShopifyのライトなプランを契約してアップデートを追い続けていたのです。Shopifyが日本市場に本格的に展開するというタイミングで、我々も迷わず早期の移行を決断しました」と沼田氏は明かします。

その最大の理由は、ビジネスにおける拡張性と機動性の確保でした。当時使用していたシステム(EC-CUBE)では、新機能を追加するたびに開発会社への要件定義や見積もりといった長いプロセスが避けられませんでした。「新しい施策を試したくても、その都度、開発会社に依頼して膨大な工数をかける状況が続いていました。現在ならアプリを一つ導入すれば済むようなことが、大変なボトルネックになっていたのです」(沼田氏)

加えて、実店舗とオンラインの「データの分断」も解決すべき課題でした。ランドセルは生産量に応じて販売上限が決まる受注販売モデルですが、当時は実店舗のPOSとECの在庫が別管理されていたため、毎日の締め処理に多大な負荷がかかっていました。

Shopifyの導入は、こうした実店舗とECのデータ基盤を統合させ、顧客体験を進化させることになります。ランドセル事業に携わる小川氏は、導入後の変化を次のように語ります。

「現在は、お客様がオンラインで事前に会員登録をした状態で来店されるため、店舗のPOSで即座に顧客情報を呼び出し、スムーズに商品と紐付けてご購入いただける仕組みへと進化しました」(小川氏)

株式会社土屋鞄製造所 ランドセル事業推進本部 副本部長 小川裕一朗氏

Shopifyの機能・アプリを使い倒す、POS統合からAI最適化まで

システムの限界という課題が解消され、強固なコマース基盤が整ったことで、現場における施策の実行スピードは飛躍的に高まりました。

ここからは、実際に実店舗とオンラインの融合から、先進的なAIの業務実装に至るまで、同社がShopifyの機能やアプリで展開する具体的なアプローチを紐解いていきます。

OMO(顧客体験の統合)の実現

■データの一元化:「Shopify POS」による在庫・顧客情報の統合

ユニファイドコマースの実装の要となるのが、「Shopify POS」によるオンラインストアと店舗の在庫統合です。導入前の課題であった「ランドセルの受注枠を手動で調整する」という運用負荷は、店舗とECの在庫が一元管理されたことで解消されました。

また、顧客データもシームレスに統合されているため、店舗スタッフはオンラインや実店舗での購入履歴や回数を把握することが可能になっています。

■来店促進とリピート化:標準機能を活かした「BOPIS」

レザーグッズ部門では、オンラインで購入した商品を店舗で受け取る「BOPIS(Buy Online, Pick up In Store)」を進めています。現在は2店舗でのテスト運用段階ですが、ECのみを利用するお客様に比べて、BOPIS利用者のリピート率が高まる傾向が出ています。

「これまでECのみでお買い物をされていたお客様に実店舗へ足を運んでいただくことで、スタッフとのコミュニケーションや他の商品に触れるきっかけが生まれています。通勤途中に立ち寄れて送料もかからないという利便性もあり、今後は対象店舗を広げていく予定です」(中橋氏)

株式会社土屋鞄製造所 グロースマーケティング部 部長 中橋竜矢氏

コンバージョンとLTVの最大化

■コンバージョン率の改善:チェックアウト画面の最適化

顧客単価やCVR(コンバージョン率)の向上にアプリが貢献しています。チェックアウト画面のカスタマイズには「Checkout Blocks」を活用し、レザーグッズのメンテナンス用品を訴求しています。

「実店舗ではスタッフがお声がけすることでセット購入をご提案できていたのですが、ECでは難しい状況でした。それが、Checkout Blocksで適切なタイミングでWEB上にてご提案したところ、メンテナンス商品の売上が大きく伸びました」(中橋氏)

また、会員登録を前提としたご購入導線を「登録なし(ゲスト)」でもスムーズに買っていただける設計に見直したことや、「Shop Pay」の活用により、カート投入から決済完了までのCVRが1ポイント改善。すべてのカート投入ユーザーが対象であるため、この利便性の改善は大きなインパクトを持っています。

■長期的なCRM構築:複数ツールを連携したナーチャリング

ランドセルは、購入までの検討期間が長いという特殊な商材です。年中(4歳)からカタログ請求が始まり、翌春の販売開始、ピークとなるゴールデンウィーク、さらに入学・卒業まで、お客様との長いコミュニケーションが続きます。

「カタログ請求、ご購入、お届けという複数のタッチポイントで『Klaviyo』を活用したメールコミュニケーションを実施しています。段階に応じてメールを配信した層とそうでない層で、購入率に明確な差が出ています」(小川氏)

土屋鞄のランドセル・2027年度公式通販サイト

グローバル展開とAIテクノロジー活用

■グローバル展開:「Shopify Markets」を中核とした越境EC

同社は現在、台湾向けと英語圏向けにそれぞれ最適化したストアを運営するなど、海外市場への展開においてもShopifyを積極的に活用しています。その越境EC展開の中核として導入しているのが、「Shopify Markets」です。これにより、言語や通貨のローカライズから関税の計算などまでをまとめて設定・管理しています。

また、多言語対応には翻訳アプリの「Langify」を用い、一部のブランドでは高度な越境ECソリューションである「Global-e」も併用しています。

■AI時代のデータ戦略:分析の民主化と「AIO(AI最適化)」

同社はAIを前提とした世界を見据え、Shopifyを軸にデータを整えています。これにより社内の意思決定の高速化と、AIを介した新たな顧客接点への備えを進めています。

まず社内の日常業務においては、ShopifyのAIアシスタント「Sidekick」の活用が定着しています。「管理画面上でわからないことがあればSidekickに聞くのが、チームの基本動作になっています。以前は専門の担当者にデータの抽出を依頼し、手元に来るまで1週間ほどかかっていた情報が、今ではミーティング中にその場で出せるようになりました。意思決定のスピードが根本的に変わっています」(中橋氏)

加えて、コネクタを利用してShopifyのデータだけでなく、GA(Googleアナリティクス)などの外部データも掛け合わせ、AIツールで週次レポートを自動生成する仕組みも構築し、毎週数時間かかっていたレポート業務の自動化を実現しています。その結果、「新規顧客」や「売上」の定義が全社で統一され、データ確認に関するコミュニケーションコストも大幅に削減されました。

さらに、AIに対して自社の商品情報を正しく理解・参照させるための「AIO(AI最適化)」も進めています。商品の属性情報(革の素材名やバッグに入るPCサイズなど)を、Shopifyの機能「メタフィールド」を用いて、AIが正確に認識しやすい構造化データとしてノーコードで設定。AIを利用するユーザーへの回答や提案の根拠として参照されやすくしています。

飛躍的なビジネス成長と、意思決定の最速化

Shopifyの導入によってシステムの障壁が取り払われたことで、同社は本来集中すべき領域にリソースを注力できるようになりました。沼田氏は、Shopifyを導入する本質的な意義を次のように語ります。

「Shopifyは、オンラインストアやPOS、越境EC、AI対応など、コマースに必要な機能を次々とアップデートし続けています。我々がそれを自社でゼロから開発する必要はありません。システムの進化はShopifyに任せ、我々はブランドとしてプロダクトの品質やクラフトマンシップ、そして顧客体験の向上に時間と頭を使えるようになります」(沼田氏)

この役割分担を最大限に活かすため、同社では独自のカスタマイズを極力避け、Shopifyの標準的な実装を優先する方針を徹底しています。過剰な独自カスタマイズを積み上げると、プラットフォーム本体の継続的なアップデートに追従できなくなり、Shopifyを利用する意味が薄れてしまうと考えるからです。

現在、同社はグループ全体で9ストアを展開していますが、ここでもShopifyを共通基盤としている強みが発揮されています。

「『このアプリを入れておけば間違いない』というベースとなるナレッジが社内に蓄積されているため、新しいブランドを立ち上げるたびに、ゼロからシステム構成を考える必要がありません」(沼田氏)

システムはプラットフォームに委ね、人は体験価値の創造に集中する。この方針は、同社に次のような成果をもたらしました。

【ShopifyのPlusプラン導入による成果】

  • LTV最大化:店舗とECの併用層が、トップの平均LTV・注文回数
  • カート→購入の通過率 +1pt:ゲストチェックアウトとShop Pay導入
  • 1週間→即時:Sidekickでデータ分析のリードタイムが短縮し、意思決定を高速化

作り手はより本質的な創造へ。土屋鞄製造所が示す次世代コマース

AIの進化がかつてないスピードで加速する中、土屋鞄製造所は「ブランドにおける人間の役割とは何か」という本質的な問いに真剣に向き合っています。

「AIが普及したことで、職域の垣根を越えた仕事がしやすくなりました。これまで外部に委託していた業務をインハウス化し、自分たちでコントロールできる範囲を広げていく。テクノロジーの進化によってそれが可能になった今、より深くブランド体験を作り込むために、我々自身が直接関与できる領域をさらに拡大していきたいと考えています」(沼田氏)

この方針に向けた具体的な実装もすでに始まっています。現状、グループブランド内のobjcts.ioでは、Shopifyの構築・テストができる「Shopify CLI」を中心に開発ツールを連携させて、LP制作のインハウス化を実現しています。これまでマーケター・デザイナー・デベロッパーの3者が必要だったLP制作が、マーケターとデザイナーのみで完結できるようになり、LPO(ランディングページ最適化)のスピードと表現の自由度が高まっています。さらに今後は、Shopifyに標準搭載されたAI機能「Shopify Magic(商品説明文の生成や画像加工などができる)」を活用したLP制作もブランドによっては導入予定です。

「Shopifyのエグゼクティブはコマースの未来を真剣に考え、それを実際に形にしています。『コマースの再発明』という領域は彼らに任せ、我々はブランドとして、クラフトとプロダクト、そして顧客体験の向上に全力を注ぐ。その明確な役割分担において、Shopifyは我々にとって信頼できるインフラであり続けています」(沼田氏)

テクノロジーが進化し、システムに任せられる領域が増えるほど、人間はより本質的な価値の創造に専念できるようになります。土屋鞄製造所が実践するShopifyの活用は、先進的なデジタル基盤と確かなクラフトマンシップが高度に融合した、次世代のコマースビジネスを示しています。

Secteur d’activité

Fashion & Apparel

Plateforme précédente

EC-CUBE

Produits

Shopify Plus, Shopify POS, Sidekick, Checkout
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