ミュージシャンや音楽クリエイターは、Spotifyで楽曲のストリーミング再生によるロイヤリティを得られるほか、ポッドキャストの配信やグッズ、ライブチケットの販売などでも収益を得ることができます。
Spotifyは世界最大級のオーディオストリーミングプラットフォームで、インディーズからメジャーまで、幅広いアーティストにとって重要な楽曲配信先となっています。とはいえ、音楽ストリーミングが主流となった現在、音楽活動で安定した収入を得るのは容易ではありません。
では、Spotifyで収益化するには、どのような方法があるのでしょうか?この記事では、Spotifyの収益の仕組みや具体的な収益化の方法を解説します。紹介するヒントは、ほかの音楽ストリーミングサービスにも応用できます。
Spotifyの収益分配の仕組み
Spotifyで楽曲を配信するアーティストは、主に楽曲のストリーミング再生によるロイヤリティで収益を得ています。Spotifyは、各市場で得られた収益や楽曲の再生シェアなどに基づいて、権利者にロイヤリティを支払います。
かつては、アーティストの作品を楽しみたいときは、CDやレコードを購入することが一般的でした。しかし、Spotifyでは楽曲やアルバムを購入せずに音楽を楽しめます。
一般的に、楽曲の再生回数が増えるほど収益も増える傾向があります。ただし、1再生あたりの金額は固定ではなく、国、リスナーのプラン、権利者との契約条件などによって変動します。
Spotifyの収益源とロイヤリティの分配
Spotifyには、主に3つの収益源があります。
- プレミアムサブスクリプション:ユーザーが広告なしで楽曲を楽しむといった特典を利用するために、月額料金を支払うサービスです。
- 広告:無料プランのSpotifyユーザーには定期的に広告が配信され、Spotifyは広告収入を得ます。
- スポンサーリンク:Spotifyは、モバイルアプリやブラウザ版で、ライブチケットの販売ページなどへのリンクを表示することがあります。ユーザーがリンク先で商品やサービスを購入すると、Spotifyに手数料が入ります。
Spotifyは、サブスクリプション、広告、手数料から収益を得ていますが、そのすべてがロイヤリティとして権利者に支払われるわけではありません。
Spotifyは収益の一部を運営費やサービスの改善に充て、残りの一部を権利者への支払いに回します。一般的には、収益の約30%をSpotifyが保持し、約70%を権利者に分配するとされています。
ロイヤリティは、レコード会社、作詞家・作曲家、音楽出版社、ディストリビューターなどの権利者に分配されます。
Spotifyのロイヤリティ計算の仕組み
Spotifyのロイヤリティは、単純に「1再生いくら」という固定単価で計算されるわけではありません。基本となるのは、プロラタ方式(比例配分)という仕組みです。
ロイヤリティの分配額は、主に次の要因によって決まります。
- 再生数:一定期間内にSpotify全体で再生された回数です。
- 再生数のシェア:各国・地域の総再生数に占める、各楽曲の再生数の割合です。この割合(ストリームシェア)に基づいて、対象となるロイヤリティが権利者に分配されます。
- 国・地域ごとのロイヤリティ単価:ロイヤリティは、国や地域によって異なるサブスクリプション料金や広告収入などの影響を受けます。
- アカウント種別:プレミアムユーザーによる再生は、広告付き無料プランの再生よりも高いロイヤリティにつながる傾向があります。
また、2024年4月からは、楽曲がレコーディングロイヤリティの分配対象となるために、過去12か月間の全世界での再生数が1,000回以上であることが条件となりました。さらに、不正な再生で基準を満たすことを防ぐため、一定数以上のユニークリスナー(異なるリスナー)による再生も必要です。
Spotifyのロイヤリティ分配先
Spotifyのロイヤリティは、主に3つのカテゴリーの権利者に分配されます。
独立系アーティスト
レコード会社と契約せずに音楽活動を行うアーティストを、独立系アーティスト(インディーズアーティスト)と呼びます。
こうしたアーティストは、TuneCore Japan、DistroKid、CD Babyなどの音楽配信サービスを利用して、Spotifyをはじめとするさまざまなストリーミングサービスに楽曲を配信できます。ロイヤリティは利用する音楽配信サービスを通して受け取りますが、契約内容によっては手数料が差し引かれます。
レコード会社
レコード会社は、音楽ストリーミングが主流となった現在も、ロイヤリティの受取先のひとつです。 大手レコード会社はSpotifyと直接ライセンス契約を結び、契約に基づいてロイヤリティを受け取ります。
独立系レコード会社(インディーズレーベル)は、音楽配信代行業者を利用して、Spotifyなどのストリーミングサービスに楽曲を配信することが一般的です。 こうした業者を利用する場合、レーベルが受け取るロイヤリティから手数料が差し引かれることがあります。
作曲家と音楽出版社
作詞家・作曲家や音楽出版社も、Spotifyでの楽曲再生に応じてロイヤリティを受け取ります。これらのロイヤリティは、著作権管理団体などが権利者に代わって徴収・分配します。日本では、JASRACやNexToneなどが著作権管理を行っています。
ロイヤリティの受け取り方法は、権利者の立場や契約内容によって異なります。また、Spotify for Artistsでは、楽曲の再生数やリスナーの属性などを確認でき、音楽活動の分析に役立てられます。
Spotifyがアーティストに支払うロイヤリティ
Spotifyから権利者へのロイヤリティは、通常、月単位で計算されます。アーティストが実際に支払いを受ける時期は、レコード会社やディストリビューターとの契約によって異なります。
Spotifyで得られるロイヤリティには、主に次の要因が影響します。
- 楽曲の再生シェアが大きいほど、権利者に分配されるロイヤリティも増える傾向があります。
- 有料のPremiumプランでの再生は、広告付き無料プランでの再生よりも多くのロイヤリティにつながる傾向があります。
- 国・地域によってサブスクリプション料金や広告収入が異なるため、リスナーの所在地もロイヤリティに影響します。
- 同じ再生回数でも、レコード会社との分配比率やディストリビューターの手数料などによって、アーティストの手取り額は異なります。
Spotifyのロイヤリティだけで高収入を得るアーティストもいますが、ライブ活動やグッズ販売、ほかのストリーミングサービス、スポンサー契約など、複数の収益源を持つことも重要です。
Spotifyで収益化する方法
- Spotifyプレイリストを活用する
- ポッドキャストやビデオポッドキャストに挑戦する
- アーティストプロフィールでグッズを販売する
- Spotifyの楽曲をSNSで宣伝する
- リスナーからの支援を募る
- 他のアーティストとコラボする
- 特定のリスナー層に向けた楽曲を制作する
Spotifyで収益を得ることは簡単ではありませんが、戦略を立てることで収益化の可能性を高められます。主な収益源は、ストリーミング再生によるロイヤリティ、Spotifyのクリエイター向けプログラム、グッズ販売やライブ活動などの関連収益の3つです。
ここでは、Spotifyを活用して楽曲や関連活動から収入を得る方法を紹介します。
Spotifyプレイリストを活用する
Spotifyで自分の楽曲を広めるうえで、プレイリストは重要な役割を果たします。Spotifyには、新しい楽曲を探してプレイリストを作成するキュレーターが数多くいます。
エディトリアルプレイリストに掲載されると、新しいリスナーに楽曲を届ける機会が増えます。また、再生や保存などのリスナーの反応によっては、Spotifyのおすすめ機能を通じて多くの人に楽曲が届く可能性もあります。 Discover WeeklyやRelease Radarのようなパーソナライズされたプレイリストで紹介されることも期待できます。
質の高い楽曲を公開する、リスナーとのつながりを深める、Spotifyのアーティストプロフィールの内容を充実させるといったことも、楽曲を広めるうえで大切です。
Spotifyのエディトリアルチームに楽曲を届けるには、Spotify for Artistsからリリース予定日の少なくとも7日前までに楽曲を提出することが推奨されています。 ジャンル、ムード、楽曲の特徴などを詳しく入力することで、エディターが楽曲に合ったプレイリストを検討する際の参考になります。
また、Spotifyのプレイリストキュレーターに楽曲を紹介する手段として、PlaylistPushのようなプロモーションサービスを利用することもできます。こうしたサービスを通じてプレイリストに掲載され、再生回数が増えれば、ロイヤリティ収入の増加につながる可能性があります。
ポッドキャストやビデオポッドキャストに挑戦する
Spotifyはポッドキャスト事業に力を入れています。ポッドキャストは広告収入を得られるため、クリエイターにとって楽曲のストリーミング再生とは異なる収益機会になります。
ポッドキャストの収益化は、楽曲のストリーミング再生によるロイヤリティとは仕組みが異なります。番組の成長に応じて、配信者自身が読み上げる広告、配信時に自動挿入される広告、スポンサー契約、ビデオポッドキャストの収益化など、複数の方法を組み合わせることができます。
Spotify for Creatorsは、ポッドキャストやビデオポッドキャストの公開・管理を支援するプラットフォームです。 すでに別のポッドキャスト配信サービスを使っている場合でも、Spotifyへの配信に対応できる場合があります。
番組の人気が高まれば、公開収録やライブイベントを開催して、チケット販売による収益を得ることもできます。
Spotifyでオリジナルグッズを販売する
Spotifyでは、アーティストプロフィールにグッズを掲載して販売することもできます。オリジナルTシャツ、マグカップ、限定アイテムなどをプロフィールページで紹介すると、リスナーが楽曲を聴いた際に商品を見つけやすくなります。
ShopifyストアをSpotifyのアーティストプロフィールに連携すれば、商品情報を同期できます。また、Shopifyで在庫管理や発送、複数の販売チャネルを一元管理できるため、グッズ販売の運営が効率的になります。
グッズ販売はファンとの関係を深める方法でもあります。楽曲を気に入ったリスナーがグッズを購入することもあり、ストリーミング収益を補う重要な収入源となります。
Spotifyの楽曲をSNSで宣伝する
SNSで積極的に情報を発信することで、Spotifyの楽曲をより多くの人に知ってもらうことができます。
楽曲を宣伝するには、Facebook、Instagram、TikTok、YouTubeなどのSNSを活用するのが効果的です。広告に頼らずフォロワーを増やし、楽曲への関心を高めることで、再生回数や収益の増加につながる可能性があります。
Instagram、TikTok、YouTubeなどからSpotifyの楽曲やプレイリスト、アーティストプロフィールへのリンクを貼って、SNSのフォロワーをSpotifyに誘導しましょう。投稿が拡散されれば、新しいリスナーに楽曲を知ってもらう機会も増えます。 有料広告を活用すれば、ユーザーの興味や関心などに応じてターゲットを絞り込むこともできます。
新曲をリリースする際は、SNSで告知やプロモーションを行って、Spotifyのアーティストプロフィールや楽曲ページへのアクセスを増やしましょう。
また、SpotifyのアーティストプロフィールにSNSのリンクを掲載すれば、リスナーにほかの活動も知ってもらえます。新曲の紹介やライブ日程の告知など、SNSを活用する方法はさまざまです。
SpotifyのDiscovery Modeも検討する価値があります。対象となる楽曲を登録することで、Spotify Radioや自動再生などでおすすめされる可能性が高まり、新しいリスナーに楽曲を知ってもらう機会が増えます。 ただし、Discovery Modeが適用された再生には通常より低いロイヤリティ率が適用されるため、収益への影響を確認してから利用を検討しましょう。
リスナーからの支援を募る
Spotifyには「ファンサポート」という機能があり、アーティストプロフィールに外部の支援サービスへのリンクを掲載できます。これにより、リスナーから直接金銭的な支援を受けることができます。ファンからの支援が、ストリーミング再生による収益を上回る可能性もあります。
ファンサポートリンクは、まだ再生回数が少ない段階でも、応援したいリスナーから直接支援を受けられる点が魅力です。新作制作、ツアー費用、ミュージックビデオ制作など、支援の目的を明確に伝えるとファンの協力を得やすくなります。
他のアーティストとコラボする
他のアーティストとのコラボによって、お互いのファンに楽曲を知ってもらう機会が増え、Spotifyでの収益拡大につながる可能性があります。たとえば、共同で楽曲を制作する、Spotifyのアーティストプロフィールなどでお互いの楽曲を紹介し合うといった方法があります。
コラボする相手は、音楽のジャンルが近いアーティストや、自分たちの楽曲にも興味を持ってくれそうなファンがいるアーティストを選ぶとよいでしょう。
他のアーティストの楽曲へのゲスト参加、共同でのポッドキャスト制作、お互いに宣伝するプレイリストの作成、双方のファンが楽しめるライブイベントの開催など、コラボにはさまざまな形があります。違うジャンルのアーティストとのコラボレーションも、新しいリスナーを獲得するきっかけになります。
特定のリスナー層に向けた楽曲を制作する
Spotifyで収益を得ることを目指すなら、特定のリスナー層に向けた楽曲の制作も検討してみましょう。 たとえば、子ども向けの音楽には一定の需要があります。大人向けの楽曲を中心に制作するアーティストにとっては、見落としがちなジャンルかもしれません。
楽曲が聴かれる場面や用途を意識することも効果的です。 勉強、睡眠、運動、瞑想、子どもの遊び、季節のイベントなど、用途が明確な楽曲はプレイリストにも追加されやすく、繰り返し再生される可能性があります。
アーティストでなくてもSpotifyで収益化できる?
アーティストでなくても、Spotifyを活用して副収入を得る方法はあります。代表的なものは、プレイリストの選曲や楽曲のレビューです。
一定数のフォロワーがいるプレイリストの運営者は、インディーズアーティストの楽曲を聴いて感想や改善点を伝えることで、報酬を得られる場合があります。報酬額は、プレイリストの規模やリスナーの反応などによって異なります。
楽曲のレビューは、専門の外部サービスなどを利用して有料で提供することもできます。 ただし、1人で聴いて評価できる楽曲の数や、丁寧なフィードバックを提供できる件数には限りがあります。そのため、大きな収入を期待するよりも、音楽に関わりながら副収入を得る方法として考えるとよいでしょう。
Spotifyで収益化する方法に関するよくある質問
Spotifyで収益を得ることはできますか?
楽曲のストリーミング再生によるロイヤリティ、ファンからの支援、ポッドキャスト、ビデオポッドキャスト、グッズ販売、ライブイベントなど、さまざまな方法で収益を得られます。 楽曲のストリーミング再生によるロイヤリティについては、2024年4月以降、過去12カ月間の再生回数が1,000回以上であることが条件のひとつとなっています。
Spotifyのロイヤリティの額は?
Spotifyで得られるロイヤリティは、楽曲が再生された国や地域、リスナーのプラン、各市場の収益規模などによって変動します。また、アーティストが実際に受け取る金額は、レーベルやディストリビューターとの契約条件によっても異なります。
Spotifyは再生数をどのようにカウントしますか?
Spotifyでは、楽曲が30秒以上再生されると、1回の再生としてカウントされます。 ただし、再生数のカウントとロイヤリティの支払い条件は異なります。ロイヤリティの算定には、不正な再生の検出など、複数の要素が関係します。
Spotifyで収益化するには何回の再生が必要ですか?
楽曲のストリーミング再生によるロイヤリティを受け取るには、過去12カ月間の再生回数が1,000回以上であることが条件のひとつです。 この基準は2024年4月に導入されました。ただし、1,000回再生されれば必ず収益が発生するわけではありません。また、ロイヤリティは再生回数だけで決まるものではなく、楽曲が再生された国や地域、リスナーのプラン、権利者との契約条件などによって異なります。




