ECサイトにとって、チェックアウト体験の質は売上を左右する重要な要素です。しかし、チェックアウトを最適化しようと思っても、既存の画面や基幹システム(在庫管理や顧客管理など)を保ったまま、決済部分だけを改善するのは難しい場合があります。
Shop Pay APIを使えば、Shopify(ショッピファイ)の高速チェックアウト機能であるShop Payを、企業規模を問わず大がかりなシステム変更なしで既存のECサイトに組み込めます。
本記事では、Shop Payの特徴と、導入の準備や実装の手順を解説します。Shop Pay APIを使用して外部ECにShop Payを導入したい事業者は参考にしてください。
Shop Payとは
Shop Payとは、Shopifyが提供する高速チェックアウト機能です。顧客の連絡先、支払い情報、配送先が保存されるため、登録した顧客はワンクリックで決済を完了できるようになります。住所を自動で確認する機能もあり、入力ミスによる配送トラブルも減らせます。
Shop Payの機能とメリットは、主に次の5つです。
- ワンクリックチェックアウト:保存済みの支払い情報と配送先を使用し、1回のタップで購入できます。入力の手間が減るため、途中で購入をやめてしまう人を減らせます。
- 暗号化された安全な決済:Shopifyはクレジットカード業界のセキュリティ基準であるPCI DSSで、最も厳しいレベル1の認定を受けているほか、カード決済時に本人確認を行う3Dセキュアにも対応しています。情報を暗号化し安全に管理できるため、購入者は安心して買い物ができ、ブランドへの信頼も高まります。
- モバイルに最適化された設計:スマートフォンやタブレットの小さな画面でも操作しやすいUIで、ストレスなく購入を完了できます。
- 支払い情報の保存:初回以降は情報を入力し直す必要がないため、買い物が手軽になり、顧客ロイヤルティとリピート購入の増加につながります。
- 高速な読み込み:決済画面の表示が速いため、読み込みを待つ間に購入者が離脱するカゴ落ちを防ぎやすくなります。
Shop Payを利用する買い物客は、2億5,000万人を超えています。Shopifyが世界的な大手コンサルティング会社と2023年4月に行った外部調査(英語)では、会員登録をせずに購入する方法と比べて、コンバージョン率が50%も高いという結果も出ており、世界中の買い物客にとって定番の決済手段になっています。
外部ECサイトにShop Payを導入する
Shop Payは、Shopify以外で運営しているECサイトにも組み込めます。
組み込みに使うのは、Shop Pay APIという決済APIです。Salesforce(セールスフォース)、SAP(エスエーピー)、Magento(マジェント)などのプラットフォームや独自開発のシステムと連携でき、複数のシステムを組み合わせた大規模なECサイトにも導入できます。
実装には、Shopifyが提供するJavaScript(ジャバスクリプト)のコードを使い、サーバー側には注文内容などをShopifyへ送信する処理を追加します。ほかのデジタルウォレットと比べて開発の負担が少なく、既存のECサイトの決済システムを変えずに、サイト運営を続けながら導入できます。
Shop Payを連携すると、チェックアウトに「Shop Payで購入」といったボタンを表示できるようになり、購入者がShop Payで支払えるようになります。
自社だけでの実装が難しい場合は、Shopifyのサポートを活用できます。サポートでは次のような支援を受けられます。
- プロジェクト全体の管理
- 導入までの計画づくり
- 技術面の相談対応
- 開発チームとの意見交換
- 定期的な打ち合わせや進捗確認
Shop Payを導入して運営業務を合理化する
Shop Payを導入すると、チェックアウトがスムーズになり、顧客体験を高めながら運営の負担も軽くできます。具体的には以下のような効果が得られます。
- カゴ落ちの削減:株式会社イー・エージェンシーの調査によると、カゴ落ちの平均的な割合は62.9%とされています。Shop Payならワンタップで購入できるため、入力が面倒で購入をやめてしまう人を減らせます。
- 顧客ロイヤルティの向上:スムーズな購入体験はブランドへの信頼を高め、再購入を促します。Shopifyの内部データによると、Shop Payで一度購入した人が、12か月以内に再びShop Payで購入する可能性は77%高くなっています。
- 運用効率の向上:モバイルに最適化されていて処理が速いため、決済関連のトラブル対応が減少し、業務効率が上がります。
顧客に最高水準の注文追跡体験を提供する
Shop PayはShopアプリとつながっているため、購入してから商品が届くまでの体験も向上できます。Shopify以外で構築されたECサイトでも、商品の発送時にフルフィルメントの情報をShopifyへ連携しておけば、購入者はShopアプリで配送状況を確認できます。
Shopアプリで注文を追跡できると、購入者と事業者の双方に次のようなメリットがあります。
- 注文状況のリアルタイム更新:購入者は、購入の完了から荷物の到着まで、注文状況をいつでも確認できます。
- 手軽にアクセス可能:購入者は、追跡番号を調べたり、配送業者のサイトを開いたりしなくても、Shopアプリで簡単に配達状況を確認できます。配達中や配達完了など、注文のステータスが変わるたびに、プッシュ通知を受け取ることもできます。
- 問い合わせの削減:購入者が自分で配送状況を確認できるため、事業者はサポート対応の負担を減らせます。
- リピート率の向上:購入後の体験がスムーズだと、顧客満足度とロイヤルティが高まり、再購入やブランドの紹介につながりやすくなります。
世界中のShop Pay利用者を獲得する
Shop Payを導入すれば、2億5,000万人以上の利用者に使い慣れた信頼できる支払い方法を提供できます。馴染みのある支払い方法を選べることはストアへの安心感につながり、新規顧客の獲得や売上アップにつながる可能性も高まります。
Shopifyの内部データによると、Shop Payを提供しているストアでは、注文の約3分の1がShop Payで処理されています。また、Shop Payの利用者は、Shop Payが選択肢にある場合3回に2回の割合でShop Payを選んでいます。
日本のECサイトにShop Payを導入する
日本のECサイトでは、スマートフォンで手軽に買えることと、安心して支払えることの両方が求められています。Shop Payなら、この2つを同時に満たすことができます。
総務省の「令和7年通信利用動向調査」によると、スマートフォンを保有している世帯の割合は91.8%に達しています。一方で、インターネットを使うときに不安を感じる人は74.2%にのぼり、そのうち約9割が個人情報の漏えいを、約4割が電子決済の信頼性を不安の理由に挙げています。実際、日本クレジット協会によると、2025年のクレジットカード不正利用被害額は510.5億円で、そのうち約93%にあたる475.4億円を、カード番号などを不正に使われる番号盗用が占めています。
Shop Payを導入すれば、スムーズな購入体験と高いセキュリティを両立でき、購入完了率と売上の向上につなげられます。
さらに、Shop Payの購入画面は日本語で表示できるため、日本の事業者にとって始めやすいのも利点です。
Shop Pay API実装の流れ
Shop Pay APIでの実装には、まず次の条件を満たすことが必要です。
- 決済前に、チェックアウトで顧客のメールアドレスを入力してもらっていること
- 事業がShopifyペイメントの利用条件を満たしていること
- Shopifyペイメントを利用できる国や地域で事業を営んでいること
- 自社または委託先の開発者に、ECサイトのAPI連携の経験があること
- チェックアウトを動かすフロントエンド(ブラウザ上の表示)と、バックエンド(データ処理)のシステムにアクセスできること
API連携の経験がなければ、Shopifyパートナー(Shopifyのパートナープログラムに参加する制作会社など)に依頼できます。なお、既存のShopifyストアではShop Pay APIを使えないため、Shop Pay専用のストアを新しく作る必要があります。
条件を満たしていたら、次の8ステップで実装します。
- 導入準備:Shop Payの登録ページから登録し、専用の管理画面でShopifyペイメントを有効にします。開発中は、Shopifyペイメントのテストモードを有効にしておきましょう。
管理画面にある販売チャネル「Shop」で、Shop IDとクライアントIDを確認し、Shop Payのボタンを表示する自社サイトのドメインを登録します。あわせて、バックエンドからShopifyのAPIを使うための認証情報も設定します。自社サイトのコンテンツセキュリティポリシー(通信してよい外部サーバーを指定する設定)にも、Shopifyが指定するドメイン(cdn.shopify.comやpay.shopify.comなど)を追加します。
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フロントエンドの実装:Shop Payのボタンを置くページで、専用のJavaScript SDK(Shop Payのボタンを表示し、クリックされたときに決済のポップアップを起動するツール)を読み込み、Shop IDとクライアントIDを設定します。そのうえで、Shop Payのボタンとログイン用の部品を配置します。購入画面を日本語で表示する場合は、言語設定(locale)に「ja」を指定します。
- 支払いセッションの作成:商品の詳細や数量、送料、税金、割引をまとめた「支払いリクエスト」を作ります。このリクエストをバックエンドからShopifyへ送ると「支払いセッション」が作られ、Shop Payのポップアップに注文内容と請求金額が表示されます。カートの中身や送料、税、在庫などは自社システムの情報を基準に、決済と注文の記録はShopifyの情報を基準にします。
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イベントリスナーの実装とリアルタイム更新:ポップアップに表示される金額と実際の請求内容を一致させるため、顧客の操作に合わせて金額を自動で計算し直せるようにします。顧客が配送先や配送方法、割引コードなどを変えると、その操作がイベント(操作があったことを知らせる通知)として届きます。イベントリスナー(特定の操作を検知して処理を実行する仕組み)で変更内容を受け取り、バックエンドで送料や税、割引後の金額を計算し直したうえで、更新した支払いリクエストをShopifyへ送ります。自社システムは各イベントに15秒以内に応答する必要があります。
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チェックアウト体験の完成:顧客がポップアップで「今すぐ支払う」を選ぶと、Shopifyから決済用のトークンが発行されます。トークンはカード情報そのものではなく、決済を安全に実行するための「引換券」のようなデータです。バックエンドでこのトークンを受け取ったら、まず在庫や価格に間違いがないかを確認します。
確認が済んだら、ShopPayPaymentRequestSessionSubmitミューテーション(ShopifyのAPIが採用するGraphQLという方式で、データを作成、更新する命令)を実行し、Shopifyへ支払いを送信します。
決済が完了したらサンクスページを表示し、注文番号や配送予定などを伝えます。また、通信エラーや在庫切れで決済が失敗したときに備えて、エラー処理とログの記録も実装しておきます。 - 注文後の処理:決済処理と注文データの登録は別々に進むため、決済の完了通知だけではShopifyに注文が登録されたかどうかを確認できません。そこで、注文が登録されたときに届くWebhook(特定の出来事が起きたときに自動で送られる通知)を受け取って、注文データを自社システムに取り込みます。ネットワークの不具合などで通知が届かない場合に備えて、Shopify側の注文情報を定期的に確認し、取り込み漏れがないかを照らし合わせる処理も組み合わせます。
この照合処理では、Webhookで取り込み済みの注文を飛ばすようにしておくと、同じ注文を二重に処理するのを防げます。取り込んだ注文データは、GraphQL Admin APIを通じて注文管理システム(OMS)と連携させ、売上の確定や返金、キャンセルなどの管理に使います。
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テストと本番公開:テストモードでは、Shopifyペイメントのテスト用カードをShop Payに登録し、決済の成功や失敗、配送先や割引の変更、Webhookが届かない場合などを一通り確認します。本番前には開発中に使っていたデバッグ(不具合の確認)用の設定を外し、本番のドメインを登録します。
- A/Bテスト:公開後は、Shop Payの導入効果を数字で確かめます。まず購入完了率などを正しく計測できているかを確認し、そのうえでShop Payを表示するグループと表示しないグループに顧客を分けて比べます。結果がよければ、Shop Payを表示する顧客を少しずつ増やし、すべての顧客へ広げます。
まとめ
Shop Pay APIを使えば、Shopify以外で運営しているECサイトにもShop Payを導入できます。Shop Payを導入することで、購入者は保存済みの配送先や支払い情報を使って、スマートフォンからでも簡単に決済できます。顧客情報の暗号化やカード決済時に本人確認を行う3Dセキュアにも対応しているため、顧客が求める手軽さと安全性の両方に応えられます。
Shop Payは企業規模を問わず導入でき、購入画面も日本語で表示できます。既存のECサイトを作り替える必要がないため、Shopifyへの全面移行を決めていない段階でも使い始められます。全面移行も含めて検討したい場合はShopifyの無料体験もありますので、ぜひご活用ください。
Shop Pay APIに関するよくある質問
Shop Pay APIはどのような企業向け?
Shopify以外のプラットフォームや独自システムでECサイトを運営し、既存のシステムを保ったままチェックアウトを改善したい企業向けです。企業規模は問われませんが、決済前にメールアドレスを入力してもらう仕組みや、API連携の経験などが必要です。
ShopifyペイメントとShop Payの関係は?
Shopifyペイメントは、クレジットカード決済などを処理するShopifyの決済サービスで、Shop Payでの支払いもここで処理されます。そのため、Shop Pay APIで外部のECサイトにShop Payを導入する場合も、Shopifyペイメントの登録と有効化が必要です。
Shop Pay APIは日本のストアでも利用できる?
利用できます。日本はShopifyペイメントを利用できる国に含まれており、Shop Payの購入画面も日本語で表示できます。ただし、Shop Payの分割払いはカナダ、アメリカ、イギリスの対象顧客向けのため、日本では使えません。




