Web広告を通して新規顧客を獲得するには、商品に関心を持つ可能性が高いユーザーにターゲットを絞ることが重要です。しかし、Meta(メタ)やGoogle(グーグル)などの広告プラットフォームが持つデータだけでは、そのような見込み客を十分に捉えられないこともあります。
Shopify(ショッピファイ)上の購買行動に関するデータにもとづいてオーディエンスを生成するShopify Audiencesを使えば、そうした悩みを解消し、広告運用を効率化できます。
この記事では、広告のターゲティングに役立つShopify Audiencesの仕組みや利用できるオーディエンスの種類、メリット、始め方、広告運用に活用するコツを解説します。

Shopify Audiencesとは
Shopify Audiences(ショッピファイオーディエンス)とは、広告の配信対象または除外対象にしたいユーザーをまとめた「オーディエンスリスト」を生成するShopifyの機能です。Shopify上の購買行動に関するデータを活用し、自社の商品を購入する可能性が高い見込み客を特定して、広告配信の対象となるオーディエンスのグループをつくります。生成されたオーディエンスリストは、接続した広告プラットフォームに自動でエクスポートされ、有料広告のキャンペーンでターゲティングに活用できます。
対応している広告プラットフォームは以下のとおりです。
プラットフォームごとに利用できるオーディエンス種別や機能は異なります。
2026年10月現在、Shopify Audiencesを利用できるのは、アメリカ合衆国またはカナダに拠点を置き、Shopifyペイメントを使用している対象のShopify Plusストアです。また、利用するにはShopify Network Intelligenceを有効にする必要があります。
Shopify Audiencesで利用できるオーディエンスの種類
Shopify Audiencesでは、主に以下のようなオーディエンスを利用できます。利用できる種類や名称は広告プラットフォームによって一部異なります。
- リターゲティングブースト:ブランドに関心を示したものの、まだ商品を購入していない見込み客を対象とするオーディエンスです。Meta、Pinterest、Snapchat、Criteoで利用でき、1〜7日ごとに新たな見込み客が追加されます。
- プロスペクティング:自社の商品や関連商品を購入した顧客と似た特徴を持つ見込み客を対象とするオーディエンスです。新規顧客の獲得を目的としたEC広告に活用できます。Meta、Pinterest、Snapchat、Criteoでは、7〜14日ごとに新たな見込み客が追加されます。Googleでは、同様の目的で利用できる「プロスペクティングシード」が1〜7日ごとに更新されます。パフォーマンスを最大化する「P-MAXキャンペーン」では、これをオーディエンスシグナルとして設定し、購入につながる可能性が高いユーザーの特徴をGoogle AIに伝えることで購買確率の高い潜在顧客を高精度で探し出せます。
- 類似オーディエンス:Shopify Audiencesが生成したオーディエンスをもとに、各広告プラットフォームが、似た特徴を持つユーザーを抽出して作成するオーディエンスです。新しい見込み客へのリーチを広げるために活用できます。
- 既存顧客オーディエンス:アメリカ合衆国とカナダに居住する既存顧客をまとめたオーディエンスです。新規顧客向けの広告から既存顧客を除外したり、リマーケティング広告で再購入を促したりする際に活用できます。

Shopify Audiencesを活用するメリット
広告キャンペーンのパフォーマンス向上
Shopify Audiencesを利用すると、広告プラットフォームだけでは捉えにくい購入意向の高い見込み客を、Shopify上の購買行動に関するデータにもとづいて特定できます。こうした見込み客を既存の広告キャンペーンに追加することで、より購入につながりやすい層へ広告を届け、コンバージョンなどの成果向上につなげられます。
たとえば、カナダでバス用品を販売するHappy Hippo(英語)は、Shopify Audiencesを活用した広告配信により、費用対効果(ROAS)が4.7倍、コンバージョン率が200%向上しました。
また、リターゲティングブーストを利用した結果、リターゲティング広告にかけたマーケティング費用あたりの注文数が最大2倍になるという成果も出ています。
ターゲティング精度の向上
Shopify Audiencesは、Shopify全体から得られる購買行動に関するデータと、継続的に改善されるアルゴリズムを活用して、購入につながる可能性が高い見込み客を予測します。
一般的な類似オーディエンスでは、自社の購入者やウェブサイト訪問者などを起点に、広告プラットフォームが似た特徴を持つユーザーを探します。一方、Shopify Audiencesでは、参加ストア全体の購買行動データと自社ストアの特徴を組み合わせて分析するため、広告プラットフォームでは得られない高い精度で見込み客を特定することができます。
商品の閲覧や購入などの購買シグナルをもとに、多角的なデータから見込み客を予測します。単に過去に同じ商品を購入した人を抽出するのではなく、特定の商品とあわせて購入されることが多い商品などの傾向も重要な手がかりとして活用します。
また、オーディエンスの生成に使用する複数のアルゴリズムは、実際のコンバージョン率や広告費用対効果などのデータをもとに継続的にテスト・最適化されています。日々蓄積される購買行動データとアルゴリズムの改善によって、ターゲティング精度は常に向上し続けています。
広告パフォーマンスのベンチマーク比較
Shopify Audiencesには、自社の広告キャンペーンの成果を、類似するShopifyストアや同じ業界のストアと比較できるベンチマーク機能が備わっています。自社の数値だけでは判断しにくい広告パフォーマンスを、ほかのストアと比較しながら評価できる点がメリットです。
比較できる主な指標は以下のとおりです。
- 平均注文金額:売上を広告に起因する注文数で割った値
- クリック率:広告が獲得したクリック数をインプレッション数で割った値
- コンバージョン率:広告に起因する注文数をその広告が獲得したクリック数で割った値
- 1,000インプレッションあたりの費用(CPM):広告の1,000インプレッションに対して支払った平均費用
- クリック単価:広告の各クリックに対して支払った平均費用
- 顧客獲得単価:広告に起因する各注文に対して支払った平均費用
過去30日間のキャンペーンパフォーマンスを確認できるほか、最大で過去1年分の推移も比較できます。
ベンチマークを表示するには、過去30日間にMeta広告経由で20件以上のコンバージョンが発生している必要があります。2026年10月現在、ベンチマーク機能が利用できるのはMetaでのみです。
顧客獲得コストの削減
購入の可能性が高い見込み客を特定できるShopify Audiencesを使うと、広告費をより効率的に新規顧客の獲得に充てることができます。
Shopify Audiencesの最新バージョンをターゲティングに利用した広告キャンペーンでは、広告プラットフォームのターゲティングのみを利用したキャンペーンと比べて、顧客獲得コストが最大50%低下した実績があります。
グローバルEC家具ブランドのNathan James(英語)では、Shopify Audiencesの導入によって顧客獲得コストが52%減少しました。また、ROASは5.6倍となり、Shopify Audiences経由で500人以上の新規顧客と10万ドル以上の追加売上を獲得しています。

Shopify Audiencesの始め方
- 利用条件を確認する
- Shopify Network Intelligenceを有効にする
- Shopify Audiencesをインストールして設定する
- 広告プラットフォームを接続してオーディエンスを生成する
- 広告キャンペーンでオーディエンスを利用する
1. 利用条件を確認する
まず、Shopify Audiencesの利用条件を満たしているか確認します。2026年10月現在、以下の条件を満たすストアが対象です。
- アメリカ合衆国またはカナダに拠点を置いている
- Shopify Plusを利用している
- Shopifyペイメントを利用している
- Shopify Audiencesの利用資格がある
- Shopify Network Intelligenceを有効にしている
2. Shopify Network Intelligenceを有効にする
Shopify Audiencesを利用するには、Shopify Network Intelligenceを有効にする必要があります。Shopify Network Intelligenceとは、自社ストアの顧客データを他のShopifyマーチャントの顧客データと安全に組み合わせ、広告ターゲティングなどの高度な機能やインサイトを提供するデータ基盤です。他のマーチャントが個別のストアのデータにアクセスすることはできません。
Shopify Network Intelligenceを有効にするには、Shopify管理画面から [設定] > [お客様のプライバシー] に進み、[Shopify Network Intelligence] の設定を有効にします。この設定を変更できるのは、ストアオーナーまたは管理者の役割を持つスタッフです。
有効にする場合は、Shopifyによるデータの処理についてお客様に通知する必要があります。また、ストアやお客様の所在地に適用される法律に応じて、以下の対応が必要です。
- プライバシーポリシーでの通知
- Cookieへの同意取得
- データ共有やターゲット広告をオプトアウトする手段の提供
Shopifyでは以上を含む自動プライバシー設定を提供しています。
3. Shopify Audiencesをインストールして設定する
Shopify AppストアからShopify Audiencesアプリをインストールします。
インストール後、Shopify管理画面から [アプリ] > [Audiences] に進み、[開始]をクリックしてShopify Audiencesの利用規約に同意します。
続いて [データ共有] セクションで、アメリカ合衆国の州法をはじめとする適用対象の個人情報保護法の要件を満たしていることを確認し、[有効にする] をクリックします。
4. 広告プラットフォームを接続してオーディエンスを生成する
Shopify Audiencesの設定が完了したら、オーディエンスを利用する広告プラットフォームを接続します。
Shopify管理画面から [アプリ] > [Audiences] に進み、利用する広告プラットフォームを選択して [オーディエンスを生成] をクリックします。その後、広告アカウントを接続し、必要な規約に同意してオーディエンスをエクスポートします。
広告プラットフォームとの接続には、広告アカウントを管理する権限が必要です。たとえば、Google、Pinterest、TikTok、Snapchat、Criteoでは広告アカウントの管理者権限が必要です。Metaでは、Facebookアカウントの2段階認証を有効にし、Metaビジネスアカウントと広告アカウントへの完全なコントロール権限を持っている必要があります。
生成されたオーディエンスは、接続した広告プラットフォームのアカウントへ自動でエクスポートされます。通常、アプリの設定と広告プラットフォームへの接続から24時間以内に利用できるようになります。
5. 広告キャンペーンでオーディエンスを利用する
オーディエンスのエクスポートが完了したら、接続した広告プラットフォームで広告キャンペーンに設定します。Shopify Audiencesからエクスポートされたオーディエンスを既存の広告セットに追加できるほか、オーディエンスを使用して新しい広告セットを作成することも可能です。
年齢や地域などの条件を追加したい場合は、広告プラットフォーム側でフィルターを設定できます。広告セットの新規作成や設定変更を行った際は、パフォーマンスを正確に判断するため、1〜2週間運用してから評価することが推奨されています。

Shopify Audiencesを広告運用に活用するコツ
広告の目的に合ったオーディエンスを選ぶ
Shopify Audiencesでは、認知拡大、検討層への再アプローチ、既存顧客への再購入促進など、セールスファネルの段階に合わせて、最適なオーディエンスを使い分けます。
購入直前の見込み客への配信を強化したい場合
リターゲティングブーストには、ブランドと接点を持ったものの、まだ商品を購入していない見込み客が含まれています。すでに自社に関心を示しているユーザーの購入を後押しするため、既存のリターゲティング広告にこのリストを追加しましょう。広告プラットフォームだけでは捉えにくかった見込み客にも広告が届くようになります。
新規顧客を獲得したい場合
新規顧客へのアプローチには、プロスペクティングや類似オーディエンスを活用します。それぞれを使った広告セットを運用し、コンバージョン率や顧客獲得コストなどを比較しながら効果の高い方法を見極めましょう。
プロスペクティングは、Shopifyが商品に関心を持つ可能性があると予測した見込み客を対象としており、認知段階から比較、検討段階にいるユーザーへの配信に適しています。一方、類似オーディエンスはより幅広い層への認知拡大に活用できます。
プロスペクティングや類似オーディエンスを利用する際、新規顧客の獲得に予算を集中したいなら、既存顧客オーディエンスを除外しましょう。
既存顧客に再アプローチする場合
リピート購入を促したい場合は、既存顧客オーディエンスをリマーケティングキャンペーンの対象として利用できます。このリストは、既存顧客に再アプローチする際の「届ける対象」、新規顧客獲得に集中する際の「除外する対象」として使い分けましょう。
広告プラットフォーム側でターゲティングを調整する
Shopify Audiencesで生成したオーディエンスは、広告プラットフォームにエクスポートしたあと、キャンペーンの目的に合わせてさらにターゲティング条件を設定できます。Shopify Audiences内で細かな条件を指定するのではなく、Metaなど接続先の広告プラットフォームで調整することをおすすめします。
たとえば、特定の地域や年齢層、性別に限定して広告を配信したい場合は、エクスポートしたShopify Audiencesのオーディエンスに広告プラットフォーム側でこれらの条件を追加します。商品の販売地域が限られている場合や、明確なターゲット層に向けたキャンペーンを行う場合などに有効です。
ただし、条件を細かく設定するほど配信対象となるオーディエンスは小さくなります。ターゲティングを狭めると、配信できる広告枠が限られるため、CPMが高くなる可能性もあります。必要以上に条件を追加せず、キャンペーンの目的に必要な範囲で調整することが重要です。
一定期間運用して効果を検証する
Shopify Audiencesを導入したら、短期間の結果だけで判断せず、十分な広告予算を設定して一定期間運用し、成果を検証します。
Shopifyでは、新しい広告セットを作成した場合や既存の広告セットを変更した場合、パフォーマンスを評価するまで1〜2週間運用することを推奨しています。配信を始めてすぐに設定を変更するのではなく、一定期間運用したうえで、コンバージョン率や顧客獲得単価、ROASなどを確認しましょう。
広告予算を決める際は、オーディエンスの規模も考慮します。予算が少なすぎると十分なユーザーに広告が届かず、多すぎるとCPMが上昇する可能性があります。Shopifyでは、オーディエンス全体の80%へのリーチを基準として、1人あたり週2〜3回の広告表示を目安のひとつとしています。
Shopify Audiencesの効果を確認するには、すでに成果が出ている広告セットと比較する方法もあります。たとえば、Shopify Audiencesのリターゲティングブーストを利用した広告セットと、従来のリターゲティング広告セットを同時に運用し、コンバージョン率や顧客獲得単価などを比較します。新規顧客獲得では、プロスペクティングを使用した広告セットと、Shopify Audiencesを使用していない広告セットを比較することで、導入効果を検証できます。
まとめ
Shopify Audiencesは、Shopify上の購買行動に関するデータを活用して、広告配信に利用できるオーディエンスを生成する機能です。広告プラットフォームだけでは捉えにくい見込み客へのアプローチや、新規顧客獲得キャンペーンからの既存顧客の除外などに活用でき、広告パフォーマンスの向上や顧客獲得コストの削減につなげられます。
広告運用では、リターゲティングブースト、プロスペクティング、類似オーディエンス、既存顧客オーディエンスを目的に合わせて使い分けることが重要です。配信後は一定期間運用し、コンバージョン率や顧客獲得単価、広告費用対効果などを比較しながら効果を検証しましょう。
2026年10月現在、Shopify Audiencesは、アメリカ合衆国またはカナダを拠点とする対象のShopify Plusストアで利用できます。利用条件を満たしている場合は、Shopify Audiencesを設定し、広告運用に活用してみてください。
Shopify Audiencesに関するよくある質問
Shopify Audiencesは日本で利用できる?
2026年10月現在、Shopify Audiencesは日本を拠点とするストアでは利用できません。対象となるのは、アメリカ合衆国またはカナダを拠点とする対象のShopify Plusストアです。利用にはShopifyペイメントの使用と、Shopify Network Intelligenceの有効化も必要です。
Shopify Audiencesの利用料金はいくら?
Shopify Audiencesアプリは、Shopify Plusストアから無料でインストール、利用できます。ただし、利用条件(Shopify Paymentsの使用や対象国など)を満たす必要があるほか、Shopify Plusの利用料金や、MetaやGoogleなどの広告プラットフォームへの広告出稿費が別途必要です。
アメリカ合衆国では、Shopify Plusは3年契約で月額2,300米ドル、1年契約で月額2,500米ドルから利用できます。広告キャンペーンを実施した場合の広告費は、各広告プラットフォームに直接お支払いください。
Shopify Audiencesが対応している広告プラットフォームは?
- Meta
- Snapchat
- TikTok
- Criteo




