ShopifyのAIアシスタント「Sidekick(サイドキック)」は、すでに多くのEC事業者に活用されています。「Winter '26 Edition」の公開から3週間で、Sidekickを使った商品説明文1,980万件、自動化ワークフロー約3万件、カスタムアプリ約4,000件、メール2万8,000件以上が作成されました。
この記事では、Sidekickへの質問例とAI回答例、主な特徴や活用のポイントを紹介します。

Sidekickとは
Sidekickは、Shopifyの管理画面に組み込まれたEC向けAIツールです。自然な言葉で質問や指示を伝えることで、ストアデータの分析やコンテンツ作成、各種タスクの実行を行えます。
自社でAIナレッジベースを構築しなくても、Sidekickが売上や在庫、注文情報などを参照し、ストアの状況に応じた回答を提供してくれます。また、商品情報の編集や外部アプリとの連携にも対応しており、複雑な課題を具体的な作業に分解することもできます。
Sidekickがストア設定や商品情報などを変更する際は、事業者による事前の確認を経て変更を適用します。アクセスできるデータや機能は、ログイン中のユーザーの権限範囲内に限られ、ストアのデータがAIの基盤モデルの学習に使用されたり、ほかのEC事業者と共有されたりすることはありません。
Shopify Sidekickの活用方法5選
1. 売れている商品と売れていない商品を把握する
Sidekickは、Shopifyの売上や注文などのデータを参照し、昨日の売上を先週の同じ曜日と比較したり、注文数や平均注文額を確認したりできます。実際の数値に基づいて売上の変化や商品の売れ行きを把握できるため、販売状況の分析や今後の施策の検討に役立ちます。
一方、AIがストアのデータと連携していない場合、「今月、どの商品を重点的に販売すべきですか」と質問しても、「季節商品や売れ筋商品、利益率の高い商品を重点的に販売しましょう」といった一般的な回答しか返ってこないことがあります。
プロンプト例:昨日の総売上を先週の同じ曜日と比較してください。注文数と平均注文額も比較してください。
回答例:昨日(10月20日)と先週の同じ火曜日(10月13日)のデータを確認しました。結果は以下の通りです。

2. 在庫と資金繰りの課題を見つける
Sidekickを使えば、在庫や売上のデータから、利益を圧迫している商品や、売れ残って資金を眠らせている在庫を把握できます。値下げやセット販売、在庫処分などの対策に加え、今後30日間の資金繰りを踏まえた在庫補充の提案も受けられます。
一方、ストアのデータと連携していないAIに「どこで収益が失われていますか」と質問しても、「利益率の低い商品や売れ行きの鈍い在庫、価格設定の問題などを確認しましょう」といった一般的な回答しか得られないことがあります。
プロンプト例:現在の在庫評価額、売れ行きの鈍い在庫、今後必要となる資金を確認してください。今後30日間の資金繰りを改善するため、在庫処分、セット販売、追加発注の3つの施策を提案し、それぞれを実行できるページへのリンクを示してください。
回答例:現在の登録在庫は0件で、具体的な処分対象や再発注数量はまだ選べないため、まず追加仕入れを抑える方針と、在庫を登録した後に使える実行ページを整理します。

3. 優良顧客を見つけ、顧客に合った施策を考える
Sidekickを利用することにより、過去90日間の購買データから顧客を新規とリピーターに分けたり、注文金額や購入頻度に応じて分類したりして、各セグメントの売上への貢献度を把握できます。売上への貢献度が高い顧客や、今後の成長が見込める顧客層を特定し、それぞれに合った施策を検討できます。
一方、ストアのデータと連携していないAIでは、RFM分析や顧客生涯価値(LTV)の計算方法、顧客セグメンテーションの一般的な手法などは提案できても、自社の実際の購買データに基づく顧客の分類や分析は難しい場合があります。
プロンプト例:過去90日間の顧客を購買行動に基づいて分類し、新規顧客とリピーター、注文金額、購入頻度ごとにグループ分けしてください。また、各グループの売上構成比を示してください。
回答例:過去90日間のデータを確認しましたが、残念ながら現時点では分析できるデータがありません。

4. ストアの状況から優先すべき施策を判断する
Sidekickは、売上の推移やアクセス数、各種パフォーマンス指標を分析し、ストアの状況に合わせて優先すべき施策を提案します。提案の根拠となるデータも確認できるため、具体的な行動につなげやすくなります。
一方、AIがストアのデータと連携していない場合、「売上を伸ばすには、キャンペーンの実施や商品ページの改善、新たな販売チャネルの開拓を検討しましょう」といった一般的な提案にとどまることがあります。
プロンプト例: 過去90日間の売上推移を分析し、ストアの実際の販売状況に基づいて、今月優先して取り組むべき施策を3〜5つ提案してください。
回答例:過去90日間の売上とアクセスを改めて確認し、今月末までに優先する施策を実績に合わせてまとめます。今月は「売上を伸ばす施策」より先に、購入できる状態を確認し、最初の訪問・注文を獲得することを優先するのがおすすめです。

また、質問を入力しなくても改善のヒントを得られる「Sidekick Pulse(サイドキック・パルス)」も利用できます。ストアのデータを分析し、改善の機会や具体的なアクションをShopifyの管理画面に表示する機能です。提案の根拠となるデータも確認でき、気になる提案を選ぶとSidekickとのチャットが開き、具体的な対応を検討できます。
たとえば、次のような改善策が提案されます。
- 対象商品と在庫データの提示:売り逃しを防ぐため、売れ筋商品のMサイズの在庫補充を優先する
- コンバージョン率の比較:SNS経由の5,865件のセッションを売上につなげるため、購入可能なコンテンツを活用する
- 離脱が発生している箇所の提示:モバイルでカートからチェックアウトに進む際の移行率を改善する
5. アプリや自動化の仕組みを構築する
Sidekickに実現したいことを伝えれば、Shopifyの管理画面内の情報をもとに、アプリの作成やストアの表示変更、業務の自動化まで支援してくれます。たとえば、イベント用の割引リンクやQRコードを生成するアプリ、新規顧客向けの割引バナー、在庫が一定数を下回った際に通知するワークフローなどを構築できます。
一方、Shopifyと連携していないAIでは、アプリのアイデアや構築方法を提案できても、実際のストア環境への実装には別のツールや開発が必要になる場合があります。
プロンプト例
- 対面イベント向けのカスタムアプリの作成: 選択した商品について、割引価格でチェックアウトできるリンクとQRコードを生成するイベント用アプリを作成してください。
- ストアの表示変更: ログインしていない顧客だけに表示される、新規顧客向けの10%割引バナーを作成してください。
- 業務の自動化: 売れ筋商品上位20点の在庫数を毎日確認し、在庫が10点未満になった場合に、商品名と現在の在庫数を記載したメール通知を送信してください。

Sidekickの5つの特徴
- Shopifyに特化した支援: Shopifyの設定やAPIの仕様を踏まえ、EC運営に関する質問や作業をサポートします。
- ストアのデータに基づく分析: 売上や在庫、注文などのデータを分析し、ストアの状況に応じた回答や改善策を提示します。
- 実際の作業まで支援: アプリの作成や業務の自動化、ストア情報の更新などを実行できます。
- Sidekick Pulseによる先回りの提案: ストアのデータを分析し、質問しなくても改善の機会を見つけ、具体的な対策を提案します。
- AI機能の継続的な改善: Shopifyは新しいAIモデルを評価し、eコマース向けに最適化しています。

Sidekick活用のポイント
課題を書き出す
Sidekickを使い始める前に、まず5分ほど時間を取り、日々の業務で改善したいことを4つの観点から書き出してみましょう。
- 現在抱えている課題:対応に困っていることや、思うように進んでいない業務
- まだ答えが出ていない疑問:判断に必要な情報が不足していることや、分析できていないこと
- 後回しになっている業務:手が回らず、実施できていない分析や改善作業
- 時間のかかる定型作業:繰り返し発生し、負担になっている日常業務
Sidekickへの質問や指示の出し方を工夫する
- 目的を伝える:「今月の売上改善に向けて」など、何を実現したいのかを伝えます。
- 具体的に指示する:比較する期間や対象を指定し、原因分析や改善策の提案まで求めます。
- 回答形式を指定する:比較表や優先順位付きのリストなど、目的に合った形式を伝えます。
- よく使う指示を保存する: 売上分析や商品説明文の作成など、繰り返し使う指示は「スキル」として保存すると、入力の手間を省けます。保存したスキルは、Shopifyを利用するほかの事業者と共有することもできます。
まとめ
Shopify Sidekickは、ストアのデータ分析や商品情報の編集、業務効率化などを支援するAIアシスタントです。効果的に活用するには、知りたい情報や実現したいことを具体的に伝え、必要に応じて分析や改善策まで尋ねることがポイントです。
まずは、売れ行きの把握や在庫管理、顧客分析など、日々の業務で時間がかかっている作業から試してみましょう。




