個人情報保護に関する規制への対応やAI活用が進むなか、企業にはデータリスクの一元管理が求められています。部門ごとに管理していると、全体的な対応状況を把握しにくいため、関連業務をまとめて管理できるOneTrust(ワントラスト)が注目されています。ただし、自社の課題や運用体制に合わないまま導入すると、機能を十分に活用できず、設定や運用の負担が先行するおそれがあります。
本記事では、OneTrustの主な機能や導入のメリットとデメリットを紹介します。また、OneTrustを活用する際の4つのポイントも解説していますので、ぜひ参考にしてください。

OneTrustとは
OneTrustとは、企業のプライバシー保護やデータ管理を支援するSaaS型クラウドサービスです。米国アトランタに本社を置くOneTrust社が提供しています。Cookie(クッキー)などに関する利用者の同意管理に加え、個人データの取り扱い状況の可視化、プライバシー影響評価、委託先のリスク管理など、幅広い業務に対応しています。関連業務を一元管理し、業務の一部を自動化することで、管理業務の効率化やプライバシーリスクへの対応を支援します。また、日本では、国内パートナーによる日本語での導入や運用支援も受けられます。

OneTrustの主な機能
Cookieやメール配信の設定管理
Cookieの利用やマーケティングメールの配信について、利用者の同意や配信希望を取得し、記録して管理します。Cookieの同意バナーでは、利用目的やCookieの種類ごとに選択肢を設けられます。メール配信についても、受けたい情報の種類を利用者が選択できるフォームを作成できます。また、利用者が後から選択内容を変更できる画面を設け、取得した同意や希望の情報をCRMやメール配信システムと連携することも可能です。
委託先などの外部事業者管理
配送会社や決済サービス、マーケティングツールなど、顧客データを扱う外部事業者の情報や評価内容を管理します。質問票を用いて、プライバシーやセキュリティに関する管理体制を評価できるほか、確認されたリスクや対応状況、担当者、タスクを記録できます。契約中の事業者のリスクをモニタリングし、必要に応じて再評価することも可能です。また、データディスカバリー機能を使って連携先のシステムを調査し、顧客データの保存場所を確認できます。
AIの利用状況とリスクの管理
社内で利用するAIシステムやモデル、AIを活用するプロジェクトについて、利用目的、担当者、利用するデータ、導入状況などを登録します。登録した情報をもとに、AIごとのリスク評価や社内レビュー、承認の手順を管理できます。また、モデルや設定の変更履歴、承認履歴を記録するとともに、変更時のレビューを進めるワークフローも設定できます。
プライバシー業務の自動化
個人データの取り扱いに関する評価や、個人からの情報開示や削除の請求への対応を、ワークフローで管理します。PIA(プライバシー影響評価)やDPIA(データ保護影響評価)では、質問票の作成と配布、回答者や承認者の割り当て、回答の確認、リスクや対策の記録を行えます。情報開示や削除の請求対応では、受付、本人確認、関係する個人データの検索、回答の作成と送付まで、各段階の担当者や進捗を管理できます。
テクノロジーリスクとコンプライアンスの管理
社内のITシステムや業務に関するリスクを評価し、社内ポリシーや各種基準への対応状況を管理します。評価項目や統制に対する回答、証拠資料、特定されたリスクや課題を記録し、是正対応の担当者や期限、進捗を設定できます。関連システムと連携して証拠資料を収集できるほか、リスクと対応状況をまとめたダッシュボードやレポートの作成にも対応しています。
データ利用のガバナンス
社内のデータを分類し、利用目的や同意、法規制などに応じたポリシーを管理します。対応するデータ基盤と連携すると、ポリシーをデータ制御に反映できます。たとえば、特定のデータ項目を表示しない設定や、利用者ごとに参照できるデータを制限する設定を適用できます。連携先に応じて、ポリシーの適用先や制御の状況を記録して確認することもできます。

OneTrustを導入するメリット
プライバシー関連の情報を一元管理できる
Cookieの同意情報や個人データの取り扱い状況、プライバシー評価、委託先のリスクなどを、導入した機能に応じてまとめて管理できます。情報が部門ごとのファイルや複数のシステムに分散している場合も、関連する記録や対応履歴を同じ環境で確認しやすくなります。たとえば、個人データの利用目的や取り扱い方法を変更するとき、関連する業務や評価記録を確認し、更新が必要な情報を整理できます。
同意情報を既存システムで活用できる
対応するCRMやメール配信システムなどと連携し、利用者が変更した同意や配信希望を関連システムに反映できます。たとえば、利用者がマーケティングメールの受信を停止した場合、その設定を連携先のメール配信システムに反映し、配信停止の設定に利用できます。各システムへの個別入力の手間を抑え、利用者の希望と実際の配信設定に食い違いが生じるのを防ぎやすくなります。なお、連携できるシステムや同意情報の反映方法は、対象システムや契約内容、設定によって異なります。
評価や確認業務の進捗を把握しやすくなる
プライバシー評価や社内確認の手順を設定し、回答者、承認者、対応状況を記録できます。たとえば、新しいサービスで個人データを扱う際に、関係部門への確認依頼や回答の回収、リスクの記録、承認までの状況を管理できます。誰の確認が済み、どの対応が残っているかを把握しやすくなり、表計算ソフトやメールで個別に進捗を追う負担を軽減できます。

OneTrustを導入するデメリット
利用する機能によっては費用対効果が合わない
OneTrustは、同意管理だけでなく、プライバシー評価や委託先管理、AIガバナンスなど幅広い業務に対応しています。そのため、Cookieの同意管理など一部の機能だけが必要な企業では、契約する機能の範囲によって費用に見合う活用が難しい場合があります。料金は会社規模や利用する機能、契約内容によって異なるため、必要な機能を整理したうえで、導入コストに見合う効果が得られるかを確認する必要があります。
導入時に業務フローやシステム連携の設計が必要になる
OneTrustを業務に合わせて使うには、現在の管理方法や承認手順、質問票、利用者の権限などを整理し、設定に反映する作業が欠かせません。既存システムとの連携やデータ移行を行う場合は、データの取得元や連携先、反映する情報なども決める必要があります。要件整理に加え、設定後のテストやデータの確認も発生するため、社内担当者の工数や外部支援の費用を見込んでおくことが重要です。
社内教育や日本の業務への適合確認が必要になる
管理者だけでなく、評価への回答や承認を行う各部門の担当者にも、操作方法や社内ルールを共有する必要があります。利用者が多い場合は、導入直後の問い合わせ対応やマニュアル整備に時間がかかることもあります。また、グローバル向けのリスク判定シートや日本語訳が、自社の業務や国内法への対応に十分かどうかは、個別に確認が必要です。国内の導入事例では、日本語訳やリスク判定シートに改善の余地があるとの指摘も紹介されています。必要なテンプレートや表示内容が自社の運用に合うか、導入前に確認しておきましょう。

OneTrustを効果的に活用するためのポイント4選
1. 対象業務を絞り、小規模な検証から始める
まずは、情報の収集や確認に手間がかかっている業務など、解決したい課題を明確にします。そのうえで、個人データの管理台帳の整備やプライバシー評価など、優先度の高い業務を選び、特定の部門や業務で小規模な事前検証を行います。実際に使う担当者に質問票への回答や入力手順を試してもらい、回答のしやすさ、確認にかかる時間、承認の流れを確認します。検証で得られた現場の意見をもとに設定や手順を見直したうえで複数の部門に展開すると、本番運用へ移行しやすくなります。
2. 日本の法令や自社の規程に照らして確認する
データマッピングや評価に使う項目は、OneTrustの標準テンプレートをそのまま使うのではなく、自社の業務やデータに合わせて調整します。個人情報保護委員会が公開するデータマッピング・ツールキットや最新のガイドライン、自社の個人情報保護規程などを参照し、保有するデータの種類や利用目的、保管場所、委託先、アクセス範囲などを整理しましょう。テンプレートや日本語訳も実際の業務に即しているか確認し、必要に応じて質問項目や表現を見直します。OneTrustを導入するだけで法令への適合が保証されるわけではないため、自社の運用に即した確認が必要です。
3. 現場と管理部門の役割を決める
個人データを扱う現場部門と、内容の確認や承認を担う法務部門やプライバシー管理部門などの役割を決めます。誰が情報を登録し、変更時に誰へ共有し、誰が確認するのかを明確にすると、情報の更新や承認を進めやすくなります。質問票や入力画面は実際に利用する担当者にも確認してもらい、分かりにくい項目や回答しづらい箇所があれば、運用開始前に調整します。操作方法に加え、どのような変更を報告するのかといった社内ルールも共有しておきましょう。
4. 導入後も登録情報や運用手順を見直す
個人データの利用方法や委託先、社内システムに変更があった場合に加え、新たなセキュリティ脅威が明らかになった際も、関連するリスク評価や対応手順を見直します。定期的に登録内容や評価の進捗を確認することも大切です。運用開始後に現場から寄せられた質問や、回答に時間がかかる項目を確認し、質問票やワークフローの改善に反映します。業務や脅威の変化に合わせて必要な見直しを行うことで、導入した仕組みを継続的に活用できます。
まとめ
OneTrustの導入を検討する際は、機能の多さだけで判断せず、自社が解決したい課題や必要な範囲を明確にすることが大切です。小規模な検証を通じて業務との適合性を確かめ、担当者や運用手順を整えたうえで導入を進めましょう。自社の業務や運用体制に合った形で活用することで、プライバシー管理やリスク管理の効率化につながります。
OneTrustに関するよくある質問
OneTrustとは?
OneTrustとは、企業のプライバシー保護やデータ管理を支援するSaaS型クラウドサービスです。米国アトランタに本社を置くOneTrust社が提供しています。
OneTrustの主な機能は?
- Cookieやメール配信の設定管理
- 委託先など外部事業者管理
- AIガバナンス
- プライバシー業務の自動化
- テクノロジーリスクとコンプライアンスの管理
- データ利用のガバナンス
OneTrustは日本語で導入や運用の支援を受けられる?
はい、受けられます。国内パートナーを通じて、日本語によるコンサルティングやシステムの導入、運用支援を受けられます。
OneTrustの導入費用は?
費用は、利用する機能や契約内容によって異なります。導入を検討する際は、必要な機能や利用範囲を整理したうえで、OneTrust社または国内パートナーに見積もりを依頼してください。
OneTrustを導入すれば、法令への適合は保証される?
OneTrustを導入しただけで、法令への適合が保証されるわけではありません。自社に適用される法令や社内規程を確認し、それらに沿ってシステムの設定や業務上の運用ルールを整える必要があります。




