顧客獲得に関する指標が好調でも、売上や利益が伸びているとは限りません。広告や検索、メールなど複数のチャネルから訪れた同じ顧客が、チャネルごとに別の顧客として記録されると、実際の顧客獲得数や顧客獲得単価(CAC)を正しく把握できなくなります。
多くの企業では、カスタマーデータプラットフォーム(CDP)やアトリビューション分析などを活用して、顧客データの統合や広告効果の測定に取り組んでいます。しかし、これらは収集済みのデータを後から分析する仕組みであり、購入時点で顧客が誰なのかを識別するものではありません。
例えば、メールアドレスが過去の購入履歴と紐付けられなかったり、別のチャネルから訪問した顧客を同一人物と認識できなかったりすると、既存顧客を新規顧客として計上してしまう可能性があります。つまり、顧客データを収集し、分析することと、顧客を正しく識別することは別の課題なのです。
こうした課題に対し、Shopifyは購入者の認証情報を活用してECサイトと顧客を結び付け、誰が購入したのかを識別する仕組みとして、Shopを提供しています。これにより、顧客獲得の効果をより正確に把握し、マーケティング戦略の立案につなげることができます。
本記事では、顧客データと顧客識別の違いや、顧客識別が顧客獲得に与える影響を解説するとともに、Shopを活用した課題解決の方法を紹介します。

顧客データと顧客識別の違い
顧客データとは、メールアドレスや購入履歴、Webサイトの閲覧履歴など、企業がさまざまな接点から収集した情報です。これらのデータを統合および分析することで、顧客の行動や購買傾向を把握できます。ただし、顧客の状況や関心は時間とともに変化するため、過去のデータが現在の顧客像を正確に反映しているとは限りません。また、データが複数のプラットフォームに分散し、同一人物の情報を正しく紐付けられない場合もあります。
一方、顧客識別とは、ECサイトを訪問した人や商品を購入する人が誰なのかを特定することです。例えば、認証済みの顧客であれば、ECサイトにアクセスした時点で識別できるため、購入前の閲覧行動なども把握しやすくなります。実店舗でも、決済時に顧客を識別できれば、オンラインと実店舗の購入履歴を紐付けることが可能です。
このように、顧客データが過去の行動を分析するための情報であるのに対し、顧客識別は現在の顧客を認識し、過去の情報と結び付ける仕組みです。両者を組み合わせることで、顧客の行動をより正確に把握し、適切なマーケティング施策につなげることができます。

外部プラットフォームによる顧客識別の課題
多くのEC事業者は、ECモールや広告プラットフォームを活用して集客や販売を行っています。しかし、こうした外部プラットフォームでは、顧客情報の管理や提供範囲がプラットフォーム側の仕組みに依存するため、事業者が顧客の行動や購買履歴を十分に把握できない場合があります。
例えば、ECモールの購入者情報を自社ECサイトの顧客データと紐付けられなければ、その顧客の購入歴や購買傾向を把握することは困難です。その結果、既存顧客に新規顧客向けの広告を配信するなど、マーケティング施策の効率が低下する可能性があります。
ECモールや広告プラットフォームは、多くの消費者に商品を届けるための有効な手段であり、利用そのものが問題になるわけではありません。大切なのは、外部プラットフォームを活用しながら、顧客との関係を自社でも継続的に把握できる仕組みを整えることです。

Shopによる顧客識別の仕組み
Shopifyが提供するShopは、販売者側のECサイトと購入者側の認証情報を結び付け、サイト訪問時や購入時に顧客を識別できる仕組みを提供しています。これにより、購入後のデータ照合だけに頼らず、顧客情報の活用やマーケティング施策の改善につなげられます。
Shopによる顧客識別のタイミング
Shopでは、購入者がオンラインストアにアクセスした段階から、顧客を識別できます。Shopのログイン機能は、Shop Payと共通の認証情報を利用する機能です。Shopアカウントを持つ購入者は、過去に利用した認証情報でログインできるため、ストア側は購入前から顧客に応じた割引や商品提案などのパーソナライズを行えます。
Shop Payでは、決済時にも購入者を識別し、保存済みの配送先や支払い情報を利用して購入手続きを簡略化できます。オンラインストアだけでなく、Shopify POSを利用する実店舗やShopアプリでも、Shopの認証情報を活用した購入体験を提供できます。これにより、複数の販売チャネルにまたがる顧客情報を結び付けやすくなります。
顧客識別による顧客獲得の効率化
Shopifyでは、オンラインストアやShopアプリなどを通じて、顧客の購入履歴や行動に関する情報を蓄積し、活用することができます。ShopifyでECサイトを運営するメリットは、ストアの構築や管理だけでなく、こうしたShopifyのエコシステムを活用できることにもあります。
顧客を正しく識別できれば、既存顧客と新規顧客を区別し、広告配信の精度を高めることができます。例えば、Shopify Audiencesは、Shopifyの購入者データを活用して広告配信用のオーディエンスを作成する機能です。Meta、Google、TikTokなどの広告プラットフォームと連携し、新規顧客の獲得や広告費の最適化に役立ちます。ただし、Shopify Audiencesは現在、米国とカナダの対象ストア向けに提供されており、日本では利用できません。
一方、Shop Campaignsは、日本でも利用できる顧客獲得サービスです。目標とする顧客獲得単価(CAC)を設定し、条件を満たす新規顧客の獲得に応じて費用を支払う仕組みで、既存顧客との重複を避けながら新規顧客の獲得を目指せます。
EYが発表した調査(英語)によると、ブランドからパーソナライズされた体験を提供された顧客は、1注文当たりの購入額が最大3倍になると報告されています。顧客識別によって既存の顧客情報を活用し、一人ひとりに適した購入体験を提供することが、ECのコンバージョンの向上につながる可能性があります。

自社顧客のShop利用状況を確認する
既存顧客のうち、Shop PayやShopアプリを利用している人は、想定以上に多いかもしれません。Shopを通じて識別できる顧客の割合を把握することは、顧客獲得戦略を見直すきっかけになります。自社の顧客がどの程度Shopを利用しているのか確認してみましょう。
まとめ
顧客獲得の効率を高めるには、顧客データを収集し、分析するだけでなく、新規顧客と既存顧客を正しく識別することが重要です。顧客識別によって、広告配信の無駄を減らし、マーケティング施策の改善につなげることができます。
ShopifyのShopは、購入者の認証情報を活用して顧客を識別し、購入前からのパーソナライズや顧客獲得の効率化を支援します。Shopの仕組みを活用し、顧客情報をより効果的にマーケティングに役立てましょう。




