B2B ECの拡大に伴い、法人顧客にもオンラインで円滑に注文できる環境が求められています。一方で、注文数や販売経路が増えるほど、社内の管理業務は複雑になりやすくなります。そのため、顧客の利便性と社内業務の効率を両立できる注文管理の仕組みを整えることが重要です。
この記事では、B2B注文管理の概要や最新トレンド、注文管理システムの主要機能に加えて、メリットや導入方法、業務を効率化するベストプラクティスを解説します。Shopifyによる最適化の方法も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

B2B注文管理とは
B2B注文管理とは、企業間取引における注文の受付から、内容の確認、在庫の確保、出荷、請求、配送状況の追跡、返品対応、再注文までの各工程を一元的に把握、調整する業務です。
B2Bでは、顧客ごとに商品価格や支払条件、購入できる商品、注文数量などが異なる場合があります。また、注文に承認が必要なケースや、一度に大量の商品が発注されるケースも少なくありません。そのため、顧客ごとに設定された取引条件に沿って、注文を正確に処理する必要があります。
B2B注文管理は、主に以下の流れで行われます。
- 注文の受付:オンラインストアのほか、電話、メール、営業担当者への直接依頼などを通じて注文を受け付ける
- 顧客情報と取引条件の確認:購入権限、商品価格、支払条件などを確認する
- 在庫の確保:注文内容に応じて、適切な拠点の在庫を引き当てる
- 商品の出荷:倉庫で商品のピッキングや梱包を行い、出荷する
- 請求と配送状況の管理:請求書を発行し、顧客へ配送状況を通知する
- 返品と再注文への対応:返品を受け付けて返金や在庫調整を行い、過去の注文履歴をもとに再注文を処理する

B2B注文管理の最新トレンド
受注チャネルのオンライン化
B2Bでは、電話やメール、営業担当者への直接依頼に加えて、オンラインストアからの注文が増えています。2025年8月に公表された「令和6年度電子商取引に関する市場調査」によると、2024年の国内B2B EC市場規模は514.4兆円となり、前年から10.6%増加しました。
オンラインストア、電話、メール、営業担当者への直接依頼など、複数の販売チャネルから注文を受け付ける場合は、受注データを一元管理し、在庫、出荷、請求を連携する仕組みが必要です。受注から請求までの情報をデジタル上でつなぐことで、在庫切れや出荷ミス、請求ミスなどを減らし、業務効率化につながります。
購買調査の自立化とAIの活用
法人顧客が営業担当者へ問い合わせる前に、ウェブサイトやAIを使って商品や取引先を比較するケースが増えています。HubSpot Japanが実施した調査では、販売企業へ問い合わせる時点で、63.5%がすでに複数の商品やサービスを候補として選び、比較検討を進めていました。また、41.6%が、「生成AIやAI検索が購買判断に与える影響が以前より大きくなった」と回答しています。
そのため、商品仕様、価格、契約条件、在庫状況など、顧客が比較する際に必要となる情報をオンライン上で分かりやすく提示しておくことが重要です。
オンラインでの顧客体験の重視
受注業務のオンライン化に伴い、購入先を検討する際にオンラインでの購買体験を重視する企業も増えています。Sana Commerce(サナコマース)が実施した調査(英語)では、B2B購買担当者の73%がオンラインでの購入を希望し、75%が「より優れたオンライン購入体験を提供する取引先への変更を検討する」と回答しました。
こうした背景から、価格や支払条件、在庫数、配送予定などを正確に確認でき、法人顧客が自ら商品を選び、注文状況を確認できるセルフサービス環境を整えることが重要です。営業担当者へ個別に問い合わせなくても購入手続きを進められるため、顧客体験や利便性の向上につながります。

B2B注文管理システムの主要機能
顧客アカウント管理
B2Bでは、1つの取引先企業に複数の拠点や購買担当者が存在し、購入権限や取引条件が異なる場合があります。顧客アカウント管理機能を使えば、企業、拠点、担当者を関連付け、購入権限、支払条件、配送先などを設定できます。
顧客は専用アカウントから購入履歴や注文状況を確認し、過去の注文内容をもとに再注文できます。
商品カタログ管理
B2Bでは、取引先ごとに販売する商品や価格が異なる場合があります。商品カタログ管理機能を使えば、購入可能な商品、販売価格、最低注文数量、数量別価格などを取引先ごとに設定できます。
顧客アカウントと商品カタログを関連付けることで、ログインした顧客に適切な商品や価格を表示できます。
注文処理
B2Bの注文は、オンラインストアだけでなく、電話やメール、営業担当者への依頼など、さまざまな経路から入ります。注文処理機能は、これらの注文情報を集約し、一元管理します。システムによっては、一括注文や承認依頼、下書き保存にも対応しています。
電話やメールで受け付けた注文は、販売担当者が注文情報をシステムに入力することで、顧客ごとの商品価格や支払条件を反映できます。
注文情報と在庫情報の連携
正確な在庫情報を表示するには、オンラインストアと社内システムのデータ連携が必要です。B2B注文管理システムの中には、ERP(統合基幹業務システム)や在庫管理システムと連携し、注文情報や在庫情報をリアルタイムに反映できるものもあります。
複数の倉庫や店舗がある場合も、在庫状況を一元化することで、顧客や営業担当者が各拠点の在庫状況を参照できます。在庫切れの商品を誤って受注するリスクも抑えられます。
フルフィルメント管理
複数の倉庫がある場合、注文ごとに発送拠点を決める必要があります。フルフィルメント管理機能を使えば、在庫数、配送先、倉庫の優先順位などに基づく振り分けルールを設定できます。
システムは設定されたルールに従い、配送先に近い倉庫を優先する、在庫のある倉庫を選ぶなど、注文ごとに適切な発送拠点を決定します。オンラインストアやEDI(企業間で注文書などのデータを電子的に交換する仕組み)から取り込んだ注文にも同じルールを適用し、出荷工程へ引き継げます。

B2B注文管理を改善するメリット
注文処理の効率化
B2B注文管理システムを導入してオンライン注文を促すことで、注文処理にかかる時間と手作業を軽減できます。電話やメールを中心に受注している場合、手作業での入力が必要になり、確認や転記に時間がかかり、入力漏れや価格の適用ミスも発生しやすくなります。
システムを導入し、取引条件の確認から在庫の引き当て、出荷指示までを連携させれば、繰り返し発生する作業を削減でき、受注作業の効率化につながります。
顧客体験の向上
B2BのEC化を進め、注文管理の利便性を高めることで、顧客満足度の改善が図れます。顧客別の価格や在庫状況を正確に表示し、注文後も配送状況を確認できるようにすれば、営業担当者へ問い合わせる機会を減らせます。顧客自身の都合に合わせて購入手続きを進められるため、顧客体験の向上につながります。
継続購入の促進
同じ商品を繰り返し購入することが多いB2B取引では、再注文のしやすさが継続利用を後押しします。注文管理システムを導入して、顧客アカウントに取引条件や注文履歴を紐づけることで、顧客は過去の注文内容を確認しながら再注文できます。毎回商品を探したり、価格や支払条件を確認したりする必要がなくなり、定期購入を円滑に進められます。
事業拡大への対応
顧客がオンラインで注文できる仕組みを整えることで、人員を大幅に増やすことなく受注業務を拡大できます。担当者が電話やメールで一件ずつ注文を受け付ける手間が減るほか、顧客ごとの価格や取引条件も注文時に自動で反映できます。そのため、取引先や注文数の増加にも効率的に対応できます。
注文データの活用
一元化された注文データは、在庫計画や営業活動を改善するための判断材料になります。顧客ごとの購入商品、注文頻度、注文数量、返品状況などを分析すれば、需要に応じた仕入れや在庫配置を検討できます。さらに、注文傾向に応じて商品や再注文を案内するなど、データに基づく顧客提案が可能になります。

B2B注文管理システムの導入方法
1. 現在の注文業務を確認する
まず、注文の受付から在庫の引き当て、出荷、請求までの業務フローを整理します。各工程に関わる部門や担当者、作業内容、所要時間を確認し、手入力や転記が発生している箇所を洗い出します。処理の遅れや入力ミスが起きやすい工程、担当者が不在になると進まない業務も確認しましょう。
2. 導入目的と必要な機能を整理する
現状の課題をもとに、システムを導入する目的と必要な機能を明確にします。顧客別の価格や支払条件、注文承認、在庫連携、再注文、複数拠点からの出荷など、B2B取引に必要な機能を洗い出します。そのうえで、業務への影響、導入の緊急性、実装にかかる負担を踏まえて優先順位を付けます。
「手入力を減らす」「在庫情報をリアルタイムで共有する」など、導入後に実現したい状態を具体的にしておくと、必要な機能を判断しやすくなります。
3. 導入するシステムを比較する
必要な機能が決まったら、候補となるシステムを比較します。B2B機能や処理可能な注文数に加え、APIの柔軟性、ERPやフルフィルメントシステムとの連携方法、セキュリティ、サポート体制などを確認します。社内の担当者だけでなく、実際に注文する取引先が使いやすいかどうかも重要です。
ECプラットフォームに注文管理機能が組み込まれている場合は、顧客情報、商品カタログ、在庫、注文を同じシステム上で管理できます。一方、外部のOMS(受発注管理システム)やERPの注文管理機能を利用する場合は、オンラインストアと社内システムの間でデータを連携する仕組みが必要です。
費用については、初期費用や月額料金だけでなく、保守、開発、運用にかかる費用を含めた総保有コストで比較しましょう。
4. データ移行とシステム連携を準備する
システムを選定したら、顧客情報、商品情報、価格、注文履歴など、移行するデータの範囲とスケジュールを決めます。ERPや在庫管理システムと連携する場合は、注文情報や在庫数が正しく反映されるかを事前にテストします。既存データの重複や不足を確認し、必要に応じて内容を整理してから移行することも重要です。
また、導入後の業務フローや運用体制を決め、部門ごとの切り替え時期や問題が発生した場合の対応方法も整理します。
5. テスト運用後に段階的に導入する
本格的に導入する前に、一部の部門や取引先でテスト運用を行います。注文から出荷まで問題なく処理できるか、各システムに正しい情報が反映されるかを確認しましょう。システムが正常に動作することが確認できたら、本格的に運用を開始します。
また、運用開始に向けて、営業、受注、倉庫、経理などの担当者へ、新しい業務手順や操作方法を共有することも重要です。取引先にも利用方法を案内し、必要に応じてマニュアルを用意しましょう。

B2B注文管理を効率化するベストプラクティス
顧客情報と取引条件を定期的に更新する
顧客アカウントに登録した企業名、拠点、購買担当者、配送先などの情報を定期的に確認します。担当者の異動や拠点の移転があった場合は、速やかに情報を更新しましょう。
商品カタログ、価格、支払条件、注文数量のルールも、契約内容と一致しているか確認します。更新日や確認した担当者を記録しておくと、古い情報が注文に適用されるのを防ぎやすくなります。
拠点や担当者ごとに購入権限を設定する
1つの取引先に複数の拠点や購買担当者が存在する場合は、それぞれの役割に応じて購入権限を設定します。
注文できる商品や金額、注文内容を承認できる担当者などを明確にすることで、誤った拠点からの発注や権限のない担当者による注文を防げます。担当者の異動や退職時には、不要になった権限を速やかに変更または削除することも重要です。
通常注文と例外注文の処理を分ける
すべての注文を同じ手順で確認するのではなく、通常注文と個別の判断が必要な注文で処理を分けます。
顧客情報や取引条件に問題がない注文は自動で出荷工程へ進め、一定金額を超える注文や在庫が不足している注文、価格の個別調整が必要な注文などは担当者へ通知します。どの条件で確認や承認が必要になるのかを、あらかじめルールとして定めておきましょう。
システム間のデータ不整合を監視する
注文管理システムとERP、在庫管理システム、倉庫管理システムなどを連携した後は、データが正しく同期されているかを継続的に確認します。
注文情報の欠落、在庫数のずれ、出荷状況の更新漏れなどを検知できるようにし、エラーが発生した場合の確認手順と担当者を決めておきます。連携状況を定期的に確認することで、誤った在庫表示や出荷の遅れを防ぎやすくなります。
運用指標を設定して継続的に改善する
B2B注文管理の状況を把握するために、オンラインで完了した注文の割合、注文受付から出荷までにかかった時間、担当者による修正や承認が必要になった件数など、注文処理に関する指標を設定しましょう。数値の変化を継続的に確認することで、問題が発生している工程を特定でき、受注業務の効率化や改善につなげやすくなります。

ShopifyでB2B注文管理を最適化する方法
ShopifyのB2B機能を活用すると、以下の手順でB2B注文管理を最適化できます。
- ストア形式を選ぶ:B2BとDtoCを扱う混合ストア、またはB2B専用ストアを選択する
- 顧客情報を登録する:取引先を会社として登録し、拠点、購買担当者、購入権限を設定する
- 取引条件を反映する:顧客ごとの商品カタログ、価格、数量ルール、支払条件を設定する
- 注文処理を自動化する:Shopify Flow(ショッピファイフロー)を活用し、確認、通知、支払いリマインダーなどを自動化する
- 外部システムと連携する:直接連携やB2B APIを通じてERPなどとデータを共有し、注文や在庫情報を最新に保つ
導入後は、Shopifyのストア分析で注文数や注文から発送までにかかった時間などB2Bの注文状況を把握し、業務改善が必要な箇所がないか確認しましょう。なお、利用できる機能はプランによって異なります。
まとめ
B2B注文管理では、顧客ごとに異なる価格や支払条件、購入権限などを正確に反映し、注文受付から在庫の確保、出荷、請求までを一貫して管理する必要があります。
受発注システムを活用して注文情報を一元化し、ERPや在庫管理システムと連携すれば、業務効率化につながります。導入後も取引条件や権限を定期的に更新し、処理時間や修正件数を確認しながら運用を改善しましょう。
Shopifyでは、顧客ごとの商品カタログや価格、支払条件を設定できるほか、注文処理の自動化や外部システムとの連携にも対応しています。自社の取引方法や課題に応じて仕組みを整え、効率的で利用しやすい注文環境を構築しましょう。
B2B注文管理に関するよくある質問
B2B注文管理とは?
B2B注文管理とは、企業間取引における注文の受付から、内容の確認、在庫の確保、出荷、請求、配送状況の追跡、返品対応、再注文までの各工程を一元的に把握、調整する業務です。
B2B注文管理を改善するメリットは?
- 注文処理を効率化できる
- 顧客体験の向上が図れる
- 継続購入の促進につながる
- 事業拡大に対応できる
- 注文データを業務改善に活用できる
ShopifyでB2B注文を管理できる?
はい、できます。ShopifyのB2B機能を活用することで、取引先情報や顧客別の価格、支払条件を設定できます。また、Shopify FlowやERPと連携すれば、注文処理の効率化を図れます。




